「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 そろそろいい気がすると伝えても巧さんは動かなかった。

 矢沢さんもだし、もしかして誰かに固定してもらいながら冷やすのがいいの? ううん、そんな常識耳にしたことがない。

 この状況を納得させる理由を考えてみては、自分で打ち消すという思考を繰り返す。

 よく分からない……。

 矢沢さんが戻ってきて、私たちを視界に捉えながらにっこり笑った。

「俺が続きやるよ。それで、食べたら帰ろうかな」

「えっ! それは申し訳ないです」

 慌ててフライパンのもとへ戻ろうとした私の手を、巧さんはがっちり掴んで離さない。

「任せて。俺こう見えて自炊してるし」

 私の不注意のせいで巧さんと矢沢さんに迷惑をかけている。居たたまれなくて巧さんを見上げると、「やらせておけ」と淡泊な声が降ってきた。

 目と鼻の先にある顔に今さらながら心臓が大騒ぎする。

 ドクンドクンと脈打つ音が全身に鳴り響いていて、触れているところから巧さんへ伝わってしまいそう。
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