「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
『どうにか調整しようと頑張ったけど、難しそうなんだ』

 憲明さんの法律事務所は個人を相手にしているので土日の方が都合いいケースが多く、週末も営業して法律相談を受け付けている。

 そして休みであっても仕事が終わっていなければ出勤しなければならない。

 家族第一という意識を持っていたから、昔の憲明さんは仕事をセーブしていたけれど、今はひとりだから詰め込んでいるのかもしれない。

「そうだろうなとは思っていました。無理を言ってすみません」

『こちらこそすまない。本来なら美月の父として、結婚前にきちんと会うべきなのに』

「そこは昔からの知り合いだから、お互い気にしないようにしましょうか」

 電話口から空気を震わせるような笑い声が聞こえた。よかった、なんとか元気そうだ。

「実は、どうしても聞きたいことがあったんです」

『ん?』

「どうして離婚したんですか?」

 向こう側で息を呑んでいる気配があった。さらりと流せないのは、憲明さんのなかで離婚に至った経緯を消化しきれていないからだろう。
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