「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
『……犯人が捕まったと聞いた』

 気が滅入っていたので、憲明さんには明日以降報告しようとしていた。事件当時からいる上層部の誰かが一報を入れたのかもしれない。

 重たい沈黙が落ち、憲明さんが掛ける言葉に悩んでいるのがありありと伝わる。

『先になるけど時間は絶対に作る。会った時にその話をしよう。巧もまだ気持ちの整理がついていないだろうから』

「はい。その時までに、落としどころを見つけてみます」

『あまり無理しないように。また連絡する』

 通話が切れ、大きな深呼吸をした。

 久しぶりに憲明さんの声を聞き、なんとも言えない感情がぐるぐると全身を駆け巡る。

 未成年だった俺にとっての拠り所だった人が、今ではもの凄く遠くにいる気がして切なさが胸をぐっと突き上げた。

 俺の大事な人で、美月の大切な父なのに、どうして埋められない距離があるのだろう。
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