「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 ないまぜになった負の感情に押し潰される前に急いでリビングへ戻る。そこで目にした光景に一瞬頭が真っ白になった。

 キッチンのシンクで矢沢と美月が寄り添うように立っている。

 状況を吞み込めても、胃が締めつけられるような嫉妬心と胸を焼き焦がされるような独占欲はとめどなく溢れ出てくる。

 矢沢が美月に触れているのが凄く嫌だ。

 気持ちがざらついて仕方なかったが、なるべく表情を変えないようにふたりの元まで歩いていく。すぐに矢沢の腕を掴んで、美月の手から強引に引き剥がした。

 ちっとも平静でいられていないじゃないか。

 自分自身に突っ込みを入れて、驚愕の色を浮かべている矢沢と美月の顔から目を背けた。

「ありがとう。代わる」

「あっ、うん。俺もトイレ行ってくるわ」

 逃げるようにリビングから出て行った矢沢に心の中で謝る。

 美月の火傷を心配して適切な処置をしたのに、とんでもなく失礼な態度を取ってしまった。
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