「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 離婚したのは憲明さん本人から聞いていたけれど、その理由については知らない。俺が深入りする部分ではないからだ。

 しかしこの感じだと、美月ちゃんの心が傷つくような別れだったのは想像できる。仲のいい家族だったし。

「病気の劣等感を抱えながらも、前向きにずっと夢見てきた。でももう頑張れる気がしないし、これ以上傷つきたくない。結婚も恋愛も諦めるべきなのかも」

 自暴自棄になっているように聞こえる口調だった。重苦しいものを吐き出しきった美月ちゃんは猫のようにくりっとした瞳から涙を流す。

 こんなにも純粋な彼女を泣かせている対象を、俺が代わりに制裁してやりたいと思うくらいに苛立ちが募った。

「恋愛も結婚も諦める必要なんてない。君を傷つけない男は必ずいる」

 あまり断定するような言い方は無責任だし好きではないのだが、どうしても言い切りたかったし、本気でそう思っている。
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