「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「早戸は警察学校の成績が抜きん出ていて、在籍中からエリートコースまっしぐらと言われていたんだ」

 自分で作った豚キムチ炒めをほとんどひとりで食しながら、矢沢は昔話を始めた。

 どれだけ食べるんだ。ダイニングバーで食事を始めてから三時間もの間、ずっとなにかしら口に入れているような。

「早戸は在籍中ずっとトップだった」

 美月は目を丸くした。

「知識がなくてすみません。在籍期間ってどれくらいなんですか?」

「俺たちは大卒だから半年だよ。卒業試験は学科と実技の総合評価で、早戸は主席だったからすごく期待されていた」

 半年とはいえ苦労を強いられた期間だった。初めの一カ月は外出ができないし、携帯電話も俺たちの世代は週末にしか使用許可が下りなかった。

 俺は制限しなければいけない趣味を持っていなかったし、会いたい人もいなかったのでストレス値は低かったはず。

 生活面でもいろいろあったが、精神面と体力面は相当鍛えられた。

 苛々している人間が多いなか、矢沢は今と変わらず陽気だった。だからそばにいても楽だったんだよな。
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