「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「おふたりとも凄いんですね。もちろん分かってはいたんですけど、改めて凄いなぁって。……語彙力がなくてすみません」

 苦笑して頬をぽりぽりと掻く姿は子供っぽさを感じさせ、いつもとは違う雰囲気が新鮮だ。よく笑うし、美月の酔い方には好感が持てる。

 これが友人や仕事関係の飲み会となると心配かもしれない。隙がある美月に悪い虫がつかないように、なるべく迎えに行こう。

「そう、俺もわりとエリートなの!」

 褒められて調子にのった矢沢に、今日何度目かの冷たい眼差しを送った。

「警視庁の捜査一課になるためには上級試験をクリアしなければいけないし、警察学校時代は成績優秀で、品行方正でなければならない」

 美月は真面目な顔でこくこくと首を上下に振る。

 よく飽きずに聞いていられるな。

 ずっと俺たちに関する身の上話に耳を傾けている姿は愛らしいし、興味を持ってくれているのが嬉しい。

「だから早戸は、とっても信用できる人間だと思うよ」

「はい」と力強く頷いた美月の純粋な瞳があまりにも綺麗で、心臓を握りつぶされたように痛んだ。
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