「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 結婚して初めて、夫として認めてもらえているのだと実感した。

 抑えきれない情熱が内側を突き破って噴き出そうになり、壁掛け時計にさっと視線を走らす。時計の針は二十一時を過ぎている。

「矢沢、そろそろ」

「そうだね。長居しちゃった」

「タクシー呼ぶ」

 手配をしている間に、ふたりは空き缶やグラスを片付け始めた。

 もうずっと前からの知り合いのような親密な空気感が漂っているのが解せないが、矢沢と美月をそれぞれ紹介できてよかった。

 しばらくしてタクシーが到着し、エントランスまで矢沢を見送ってから部屋に戻った。

「お疲れさまです」

 シンクに置かれた食器はすでに洗われていて、お湯張りボタンも点滅している。家事が早すぎて、さすがとしか言いようがない。

 交互に風呂に入ってから、なんとなくソファに並んで座る。

「火傷は痛むか?」

「ちょっとだけピリピリします。明日の夜まで、このまま様子を見てみます」

「痛みが続いていたら、土曜の午前中に病院へ行こう」

 できれば明日受診した方がいいのだが、美月は仕事があるし。
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