「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「そうだったら行ってきますね」

 俺が車で連れて行く、という意思表示をやんわり断られた。もっと甘えて頼ってほしいと願うのは俺のわがままか。

「……巧さん、無理していないですか?」

 脈絡のない質問に「え?」と、間抜けな声がこぼれた。美月は居心地が悪そうな苦笑いを浮かべる。

「お酒のせいだったらいいんですけど、いつもと違うように見えて」

 ざわざわと心が乱れ、喉は張りついたように動かない。

 ここでアルコールのせいにすれば済む話だ。でも心の片隅に、美月にすべて打ち明けたいという想いもあって葛藤する。

 事故とひき逃げ犯に対して抱く負の感情は、俺が自分の力で解消しなければいけない課題だ。背負わせるべきではない重荷を美月にのせるのは違うのではないか。

「巧さん」

 呼ばれてはっと我に返る。無意識に俯いて考え込んでいた。この時点でなにかあると言っているようなもので、自分の行動に一貫性がなくて混乱する。

 美月の見立て通り、今の俺は凄く無理をして気を張っているから些細なことで動揺するのだ。
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