「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「私たちはもう家族です。いつでも頼ってください。頼りないですけど」

 絆創膏を貼った手をひらりと上げて、へへっと笑う姿に癒されて、胸のつかえが取れた。

 鬱屈が消え去ったところに、洪水のような激情が流れ込んでくる。

 衝動的に美月の身体を抱き寄せて、染み入るような優しい体温を全身で感じた。

 美月はなすがまま流れに身を任せていて、表情を確認できないからなにを思っているのか分からない。ただ拒絶はしないはずだという彼女への信頼感があり、あまり気にならなかった。

 洗い立ての髪から甘い香りがして顔を埋める。ドクンドクンと全身に響き渡る心臓の音は伝わっているだろうか。

 好きな女性を抱きしめているという僅かな緊張感はあるが、それを上回ってすべての感情を溶かすほどの安堵感の方が強い。

 離しがたいな。このままずっとくっついていたい。

 とはいえ時間がそんなにないので、いつまでもこうしているわけにもいかない。後ろ髪を引かれつつ美月と距離を取る。

 美月は耳まで赤く染め上げて、ちらっと俺に視線を寄こしてからは恥ずかしそうに俯いている。

 可愛い。
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