「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「巧さん」

 美月の方へ顔を動かす。すると、めいっぱい伸ばした手で頭を撫でられた。

 呆気に取られて動きを止める。

 ……そういえば、母は高校生の俺の頭を、犬を愛でる時と同じようにわしゃわしゃと撫で繰り回すのが好きだった。

 好きというか母なりのスキンシップか。

 例えばテストでいい点数を取った時など、思春期の俺が受け入れやすいように少しだけふざけて、『よーしよし、よくやった!』と言ったりもして。

 亡くなってから一度も思い出していない記憶が瞼に浮かび、懐かしさが胸をせり上がってくる。

 無言のまましばらく頭を撫でていた美月の手が物音ひとつ立てずに離れた。

 互いに見つめ合い、美月はふわっと表情を和らげた。

 目の前にいるこの儚くも気高い人を一生かけて守りたい。心から流れ出た強い決意が噴き上げた。
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