「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「美月、好きだ」

 どうしても言わずにはいられなかった。

「愛おしいと思っている」

 例えるなら、時間をかけて薪をくべ、ついに燃え上がったような愛情だ。

 美月は目を丸くして、手を喉元にやった。驚きに言葉を失っている様子が見て取れて、俺の恋情はほんの少しも伝わっていなかったのだと苦笑する。

 そんな俺の反応に、更に信じられないといった表情を浮かべた美月は、脱力してソファの背もたれに身体を預けた。

 どっと疲れたみたいな顔をしている。渾身の告白にこんな反応をされるとはさすがに予想していなかった。

「契約結婚を持ち掛けたのは俺なのに、好きになって悪い」

 改めて考えると、相当自分勝手な振る舞いをしている。

「悪くないです! すみません、びっくりしちゃって、混乱して」

 美月は居住まいを正して俺の方へ身体を向ける。白くて細い喉が上下し、こちらまで緊張感に包まれた。

「私も、巧さんが好きです」

 望んでいた返事を貰えたのに、胸がいっぱいで息をするのがやっとだった。
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