「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
五、
ひき逃げ犯の話をしてくれたあの日以来、巧さんが以前より素をさらけ出すようになった。
一緒の部屋で寝ようと提案されたので同じベッドを使用しているし、温もりを分けあっている時はとにかく甘くて、幸せで、溶けてしまいそうになるほど。
心の距離がぐっと縮まって幸せを実感している。
給料日の今日、仕事を定時で終わらせて、小一時間だけ買い物をしようかと本部から徒歩十五分のRicheriche店舗へ足を運んだ。
リビングが殺風景だから、部屋の雰囲気を壊さない程度のインテリアがほしい。三十分ほど物色して、ポスターとその額縁、お洒落な壁掛け鏡を購入した。さすがに手に持って運べないので週末にマンションへ届くように手配する。
春頃までは暇さえあれば店舗を巡ってウインドウショッピングを楽しんでいたのに、最近は行こう頭に浮かぶこともなかった。
それだけ目まぐるしい日々だったんだよね。
陽平は先週の九月十七日付けで異動していった。とてもあっさりした幕引きで、おそらく本人も当てが外れたと思っているはず。
誰も送別会を開こうって声を上げなかったし、花束とか、そこまでじゃなくてもみんなで陽平を囲んで別れを惜しむ……みたいなのもなかった。
あんなにきつくあたってきた同僚も、以前ほどではないけれど普通に会話をしている。
人の噂も七十五日って、まさにそれだった。
別れてから一カ月半か。もっと長い時間が過ぎているように感じる。