「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
二、
趣味に没頭し、夢に向かって邁進していたので、異性に告白をされた時も付き合いたいと思ったことがなかった。病気というコンプレックスを抱えていて、誰かを好きになった後に振られたら怖いという、後ろ向きの考えが後押しをしていたのもある。
経済的にも精神的にも自立したと思えた時、陽平と急速に仲が深まり、この恋は運命だと本気で考えていた。
こんな形で終わりを迎えはしたが、一年間大人の恋愛をして経験を積めたと思っている。
……だとしても陽平との経験と、巧さんとでは話が違ってくる。どうしよう。
隣に座っていた巧さんにいきなり抱きしめられて、洪水のように流れていた涙は一瞬で引いた。
巧さんが誠実な人なのは知っているし、年の離れた妹を慰める心情なのだろう。だとしても、あたり前に注がれた同情を享受できるほど私は男女の馴れ合いに免疫がない。