「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「その心情は理解できるよ。それなら足を捻挫しているし、実家を頼るのはどうだ?」

 脳裏にかすりもしなかった提案に、ざわついている胸に追い打ちをかけられて息苦しくなった。

 離婚後塞ぎこんでいた母は時間をかけてようやく元気になった。ひとりでも大丈夫だからと後押しをしてくれて、私は実家を出る決心がついた。

 だからといって母の本心は母にしか分からないし、もしかしたらまだ離婚のショックから立ち直れていないかもしれない。

 父とは連絡を一度も取っていないので、家を出てからどのような生活をしているかも分からない。

 父から金銭面の援助は受けているけれど、精神面では母はひとりで頑張っている。そんな母に迷惑をかけ、余計な心労を与えたくない。

「母に、彼に誕生日のお祝いをしてもらう話をしてしまったんです」

 誕生日に予定がないなら一緒に食事をしようと母に誘われたのだ。安心させたくて初めて陽平の存在に触れたのに、タイミングが悪すぎだ。
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