「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「それなのにこんな姿で帰ったら、余計な心配をかけてしまいます。別れたことを話すにしても、今日ではない気がします」

 そしてこれは巧さんにも言える。知り合いだからといって、これ以上彼の時間を奪うのは申し訳ない。いつの間にか二十三時を過ぎている。

 あれ? ホテルってこんな遅い時間からチェックインできるものだっけ?

「それならしばらく俺の家に来い」

 一抹の不安がよぎった時、巧さんから思いがけない提案をされて声が裏返った。

「え!? いえ、それはさすがに、大丈夫です!」

 気が動転して、無意識に身体を後ろに反らしてしまった。めちゃくちゃ拒否しているようにも見えなくはなく、失礼な態度だったと急いで居住まいを正す。

 おかげで脳が揺れてくらくらした。疲れもあるのだろうけれど。

「今の美月ちゃんをこのまま帰すのは心配だ。君のお父さんに助けられたから、恩返しだと思ってくれ」

「恩は父に返していただければいいですよ」

「そもそもこのホテルの最終チェックインは、二十三時だ」

 やはりホテルというのはそういうシステムがあるのかと、気付くのが遅れた後悔で頭を抱えた。
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