「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました

 巧さんが暮らしている高級マンションは都内の一等地にあり、新築で驚くほど綺麗だ。十階建ての十階角部屋なのでエレベーターが必須となってくるが、そのエレベーターの中にはカメラがついているし、一階でモニター確認できるようになっている。セキュリティ対策がしっかり取られていて安心安全だ。

 非常事態が起きても十階なら難なく駆け下りられるからと話されたので、とても体力がある人なのだと思う。

 私も十階ならいけるかな。店舗で働いていた時は一日中立ちっぱなしだったし、重い物を運ぶ作業も多かった。

 警視正とはどういう仕事をするのだろう。そのために鍛えているのか、それとも元々エネルギーが満ちている人なのか。

 巧さんと目の前の出来事に意識が向いているおかげで、ホテルの部屋にいた時と比べて陽平のことを考える時間がほとんどない。

 でもそれは今晩に限ってのこと。朝になって日が昇れば、まだ心の中心に居座っている恋心の手放し方を探さなければいけない。

 世の中の皆はどうやってひとつの恋愛を終わらせているのか。明日、麻美にもう一度話を聞いてもらえたらいいけれど、忙しいかな……。
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