「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 洗面所で手を洗いながらふと顔を上げ、鏡に映る自分の口角が上がっていることに気づき、盛大に苦笑した。

 これが数時間前に失恋した人間の顔だなんて。

 マンションの間取りは2LDKで、洋室もキッチンも広すぎず狭すぎず、導線に無駄のない設計になっているそうだ。

 巧さん、たぶん真面目な性格だ。友達の家に遊びに行ってここまで丁寧な説明を受けた経験はない。

 そんな彼にしっくりくる部屋で、デザイナーズマンションだけあって壁紙の配色などがとにかくお洒落だ。家具と家電は黒色で統一されており、白色とグレーを基調とした内装に合っている。

「散らかっていて悪い。明日まとめて掃除するつもりでいたから」

「むしろ綺麗ですよ」

 巧さんは聞こえているのか聞こえていないのか、それすらも判断がつかない無表情でいる。

 物は乱雑しているけれど、ひとりで生活してのなら誰しもそうなる。私としては衛生面が整っていればそれは綺麗だと思う。
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