「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「ひと晩泊めてもらって、明日には家に戻るつもりでした」

「たったひと晩で、彼の荷物がたくさんある場所に行けるまで回復するのか?」

 これには答えられなかった。今はあまり寂しさを抱いていないけれど、それは巧さんがそばにいるから。それでもいい大人なのだから、一日でも早く自分の生活に戻るべきではないか。

「たぶん大丈夫です」

「美月ちゃんがそう言うのならそうしよう。家までは付き添うから」

 それは病院もという解釈で合っているはず。

「ひとりで行けますよ。お気持ちはありがたいですけど、巧さんにこれ以上ご迷惑おかけできません」

「俺がしたくてしていても、美月ちゃんにとっては迷惑になる?」

「それはないです」

 本当に迷惑ではないので即答すると、巧さんはじっと私を見つめた。

 改まって視線を交わす行為に緊張感と羞恥心が込み上げ、心臓がドクドクと激しく鳴る。
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