「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「だったら一緒に行こう」

 表情も声音も温度を感じさせないのに、私を見つめる瞳の奥に優しさを感じて、無意識に頷いていた。

「ありがとうございます。心強いです」

 緊張が解けて無意識に笑みがこぼれる。

 巧さんは一仕事終えたといったスッキリした顔になった。

 責任感の強さは職業柄なのか、彼の本質なのか。……あ、また同じようなことが気になっている。

 明日も一緒に過ごすなら、どこかのタイミングでこれまでに抱いた疑問を少しずつ尋ねてみるのもいいかもしれない。

 シャワーを浴びてから休むと言う巧さんに、「おやすみなさい」と挨拶をして、なにもない部屋にぽつんと敷いてある布団に寝転がる。

 借りたスエットは大きすぎて、ズボンのウエストゴムを結んでもずり下がってくる。

 陽平は百七十センチないくらいだから、パジャマやティーシャツなどは共有できた。

 置いてある荷物はどうすればいいのかな。向こうからの連絡は期待できないし、私からメッセージを送るしかないのか……。でも内村さんに知れてまたトラブルになるのは嫌だ。

 悩んだところで答えは出ず、諦めて部屋の壁紙や蛍光灯を眺める。

 物に囲まれた生活をしているので、普段と真逆な殺風景の空間が新鮮だ。

 いつもと違う環境で眠れるか不安だったが、すぐに睡魔がやってきて、意識を半分ほど手放しながら部屋の電気を消した。
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