「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
アラームを解除していなかったので、いつも通り六時半にスマートフォンの音で目を覚ました。
足の痛みで夜中に何度か起きたけれど、それでもよく眠れた方だと思う。
起き上がって恐る恐る足を床につける。痛みは走るものの想像していたより動けて一安心した。
部屋を出てリビングに入ると、いろいろなものが入り混じった香りが鼻腔をくすぐった。
「おはよう。眠れた?」
寝起きで声が出づらく、咳払いしてから首を上下に動かす。
「おはようございます。はい、布団がふかふかでよく眠れました」
キッチンカウンター越しに挨拶をされて、寝る前には緩和されていた緊張感が戻ってくる。巧さんは「あの布団ふかふかなのか」と、手元に目を落としながら呟いた。
客人用なので使用したことがないってことだよね。もしかして新品だったのかな。
「珈琲入れるけど美月ちゃんも飲む?」
「はい」
「食パン焼くけど食べるか?」
「食べたいです」
私の返答に反応はなく、巧さんは淡々と朝食の支度を続けている。その様子を物珍しく眺めていると、不意に顔を上げた巧さんに見つめられた。
ルームウエア姿で、髪をセットしていない巧さんは昨日と比べてとっつきやすさがある。
寝癖がついており、その微かな隙が人間味を感じさせはするが、口調と表情は相変わらず淡泊だ。