「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 父も責任感が強く頼りになる人だった。ふたりのまとう雰囲気が似ているのはただの偶然なのだろうか。

 最近は父について考える時間は少なくなっていたけれど、巧さんと過ごしていると事あるごとに思い出す。そして不思議なことに、離婚の一件で父に抱いた良くないイメージは、巧さんといる時には思い浮かばない。

 ほとんど言葉を交わさないまま、大学四年生から暮らしているマンションへ到着した。

 当初の予定ではRichericheでアルバイトの採用をされた時に引っ越そうとしていた。しかし両親の離婚があり、憔悴していた母をひとり残してはいけなかった。

 もう大丈夫だからと、私の背中を押してくれた母の気持ちに手助けされて家を出たけれど、本音はどうなのだろう。

 目の前にある仕事と恋愛に夢中で、父と同じように母を省みてなかったのかもしれない。

 急に自責の念に駆られて胸に鈍痛が走った。

 足が治ったらすぐに実家に行こう。電話は頻繁にしているとはいえ最後に会ったのは二ヵ月前だ。
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