「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 エレベーターにのって七階まで上昇し、通路の一番奥にある角部屋の玄関まで歩いていく。

「俺の部屋と配置が似ているな」

「そうかもしれませんね」

 ちょうど同じことを考えていたので小さく笑って鍵を解錠する。

 扉を開けて蛍光灯をつけ、ああ、自分の家だ、とあたり前の感想を抱いた。

 一日空けただけなのに数日振りのような感覚に襲われる。それだけひと晩で多くの出来事があったのだ。

「スリッパがなくてすみません。どうぞ上がってください」

 言いながら、巧さんの部屋にもスリッパはなかったなと思い出す。

 巧さんは私と違って躊躇することなく靴を脱いで廊下に足を下ろした。

 入ってすぐ左手にある洗面所で先に手を洗い、巧さんが洗っている間に畳んであった段ボールを手早く組み立てる。

 先週ちょうど定期便で頼んでいる洗剤類が届いたばかりで、段ボールや緩衝材を捨てずに放置したままだった。

 不幸中の幸いってこういうことを言うのかな。
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