「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 組み立て終えたところで巧さんが部屋に入ってきた。さすがに手持無沙汰のようで、扉の前で突っ立っている。

「お茶入れますね。よかったらそこのソファにどうぞ」

 朝とはいえ八月の暑さはじわじわと体力を奪っていく。巧さんはガラステーブルの前に設置したふたり掛けソファに座った。

 私は柄も色合いも違うグラスをふたつ食器棚から出す。

「ペアではないんだな」

 失恋直後の人間にそこを尋ねるのかと、思わず突っ込みそうになる。

 でも心の揺らぎが全くないってことは、すでに失恋から立ち直ってきている証拠だ。別れ方が壮絶だったせいだとしてもこんな簡単に気持ちの整理をするのは、私が薄情だからなのか。

 冷蔵庫から麦茶が入ったピッチャーを取り出して、グラスに注ぎながら答える。
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