「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「あっ」

 咄嗟に巧さんの手を止めようとした気持ちを吞み込んで、心遣いに甘えようと思い直す。

「こんなことまでさせてすみません。助かります」

「あまり歩かせたくないから俺が回収したいところだけど、さすがに分からないから、これくらいは」

 まだ言葉が続くかと思って待ってみたが、巧さんはそこで切って黙々と梱包作業に取り掛かる。

 ひとつひとつの所作が丁寧だ。私は大雑把なところがあるから、巧さんのように落ち着きがある人は自分にはないものを持っていて妙に心が引き込まれる。

 ここは巧さんにお任せして、私は着替えを済ませた方が早く家を出られるかな。

「着替えてきますね」

 たった半日で甘えることに抵抗がなくなり、床に胡坐をかいて作業をしている巧さんに声を掛ける。

「どうぞごゆっくり」

 顔を上げもせず、素っ気ない声が返ってくる。巧さんの通常運転にもだいぶ慣れた。
< 45 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop