「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 洗面所で黒色の花柄ロングスカートと、ベージュのノースリーブニットに着替える。

 借りたスエットを両手に持って部屋に戻ると、段ボールには綺麗にガムテープが貼られていた。

「ありがとうございます。凄く助かりました。服ですけど、洗ってから返せばいいですか? 洗剤にこだわりとかあります?」

 香りが好きみたいだから柔軟剤にこだわりがあるかもしれない。私は汚れが落ちればいいので、使用している洗剤はしいて言えばコスパ重視でいる程度だ。

「うちで洗えばいい」

 このまま返せばいいという意味だろうか。

 きょとんとしていると、巧さんが私の手荷物に視線を移した。

「泊まる用意は?」

「え?」

 意味がまったく分からなくて呆ける。巧さんは何かを考えるように視線を外して宙を見つめた。

 ふたりの間に静けさが落ち、私は昨晩からのやり取りを思い出す。

 今朝ちゃんと家に戻ると伝えた。でも巧さんは最初に『それならしばらく俺の家に来い』と言ってくれていた。今の会話はそういうことだよね。
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