「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 ちらりと様子を窺うように巧さんを見ると、向こうも視線を合わせた。

「昨日はこの荷物を目にするのが辛かったので、帰りたくないと思いました」

 話しながら段ボールに視線を投げる。

 人の縁がこんな簡単に切れることを初めて経験した。あまりも呆気なく、儚い。だからこそ大切にしなければいけないし、大事にする人間関係を見誤ってもいけないのだろう。簡単そうで難しい。

 決して強がっているわけではなく、自分が冷静でいるのを傍観できている。

「でもこうして片付きましたし、吹っ切れたので大丈夫です」

「もう?」

「はい。私ってドライな人間なのかもしれないです」

 額を指先でかきながら苦笑する。

 二十八年間生きてきて、自分という人間をきちんと理解できていると思っていたけれどそうではなかった。

 誰かを好きになって、失って、その時に自分がどういう心理状態になるのかを経験できたのは、これからの人生に深く影響を与えそうだ。

「切り替えが早いのはいいことでもあるし、美月ちゃんらしい気がする」

「そうですか?」

 巧さんの目に私はどう映っているのだろう。少なくとも私を見守る表情は静かながらも穏やかさがあるので、肯定的だと受け取ってよさそう。
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