「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「それで、どうする」

 どうすると聞かれても、きっと私じゃなくても世間一般の女性なら、巧さんの家でお世話になる選択肢は選ばないよね? そもそもどうしてここまで気にかけてくれるの? 父への恩返しというけれど、父は巧さんへどこまでの温情をかけたというのか。

「迷惑をかけることしか想像できないんですけど、巧さんにとって、私がいて助かることとかあります?」

 答えづらい質問なはず。しかしここまで言わなければ、責任感の強い彼は引かない気がした。

「安心する」

 言い淀むと想定していたのに返ってきた言葉は斜め上をいくものだった。

「安心?」

「今日帰してしまったら、美月ちゃんの足や、失恋したての心が大丈夫なのか、気になって仕方がない」

 巧さんの人情の熱さに驚きすぎて声が出なかった。優しすぎて、逆にこちらが心配になってしまう。

 彼が安心するというなら……と迷いは胸で渦巻く。それでもやはり、自分は自分、他人は他人、線引きは必要という思考が働いた。
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