「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 だからこそ過去に憲明さんにしてもらったことを、俺は美月ちゃんにしている。憲明さんの強引さはあの時の俺に必要だった。

 もちろん俺の考えを押し付けているだけで、美月ちゃんにとっては迷惑なのは分かっている。それでも放っておきたくない。

 俺にとって大切な人というのはほぼおらず、職場で信頼している人間はいても憲明さんや美月ちゃんへ抱く感情とは別物だ。

 ……俺は無意識に、彼女をとても身近な人だと位置づけているのかもしれない。美月ちゃんにとってはただの知り合いにすぎないのに。

 手に余る庇護欲の正体に気づいて苦笑しそうになり、代わりに目を瞑って息をつく。

 併設する薬局で処方された痛み止めと湿布を受け取って車へ戻る。エンジンをかけてすぐ切り出した。

「心配だから、足が治るまで俺のところにいろ」

 これで断られたらもう過度な干渉はしない。
< 51 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop