「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 感情を上手く外へ出すことができず、具現化するのが昔からとにかく苦手だった。

 両親を亡くしてから拍車はかかったが性質は物心ついた頃から。

 両親はひとりっ子だったので親族は少なく、父方の祖父母と母方の祖母は俺が幼少期に他界している。

 祖父は植物状態で地方の病院に入院していたが、両親が亡くなった事故に関わっていたのもあり、その姿を目にしたら自分の足で立っていられなくなりそうで、怖くて一度も会わないまま十年前に他界したと知らせがあった。

 今でも自分の判断は間違っていなかったと思う。必要な時に過去から逃げたからこそ、精神を潰さずにここまでやってこられたから。

 こうして過去を振り返っても今は虚無感に襲われたりしない。一年後、十年後、三十年後と、自分の未来を描き続け、走り続けることで俺はひとりでも生きていけるのだ。

 普段はわざわざ意識してこんなふうに人生について思考を巡らせたりしない。美月ちゃんといると、やはり感情が動く。

 なんだろうな、これは。
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