「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 車を発進して自宅へと向かう。美月ちゃんは「よろしくお願いします」と言ったきり窓外へ視線を投げたまま。緊張している様子はなくぼんやりしており、俺に遠慮したりしないからこちらも気が楽だ。

「今さらだけど、美月ちゃんは何の仕事をしているんだ?」

「Richericheって知っていますか?」

「いや、聞いたことがない」

 美月ちゃんは小さく笑い声をこぼしてから続ける。

「生活雑貨を販売しているお店で、そこの本部で企画担当をしています。学生時代から店舗でアルバイトしていたんです」

 どうりで部屋がお洒落だと思った。

 白とベージュで統一され、家具はウッド調デザインがアクセントとなっており、物は多すぎず綺麗にまとまっていた。

「インテリアが好きなのか?」

「はい。好きです」

 意思の強さが感じられる口調に拍動が強くなった。唾をごくりと飲んでから横をちらりと見ると、前を向いている美月ちゃんの明るい表情に思わず目を細める。

 すぐに視線を正面に戻し、全身に音を響かせている心臓の動きに戸惑う。

 まいったな。たまに見せる美月ちゃんの表情や声音にドキッとしてしまう。

 美月ちゃんが俺の部屋に入るのを躊躇していた理由のように、俺も彼女は妹のような存在だけでなく、れっきとした大人の女性なのだと気をつけて過ごしていかなければならない。
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