「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 美月ちゃんは顎に手をあてて考える仕草をした。癖なのか、すでにもう何度もこの所作を見ている。

 感情が表に出やすいところもだし、ジェスチャーが多めなのも、彼女が何を思っているのかが分かりやすくてありがたい。

「ちょっとキッチン周り見させてもらいますね」

 立ち上がった美月ちゃんと一緒にキッチンへ行く。調理器具やストックしてある食材などの説明をひと通り済ませると、美月ちゃんは首をこくこくと上下に動かして納得した様子だった。

「お昼はいつもお弁当を作っているから、朝に準備してもいいですか?」

「いいよ」

 偉いな。俺は朝いつも時間ぎりぎりまで寝ているのに。

「ひとりもふたりも変わらないので、巧さんの分も作れますけど……それはいらないかな?」

 最後の方は半分自分に問いかけているようで、砕けた口調になりながら小首を傾げた。その姿が微笑ましくて口角が自然と上がる。

「ちなみに夕飯の残りがメインになります」

 苦笑しながら説明をするところは、ありのままの自分をさらけ出していて飾り気がなく接しやすい。だから俺も無意識に口から本音がこぼれた。

「用意してもらえるのはありがたい」
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