「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 言葉はなかったが美月ちゃんの微笑みが俺への返しなのだろう。俺の意向を確認した後、美月ちゃんはまた戸棚などを開けたり閉めたりして中の物を確認した。

 その動作を眺めながら、自分の家なのに他人の家のような感覚に包まれる。

 ここに越してきてから誰かを招いたことがないので、自分の生活空間に他人がいる状況がまだ慣れていないせいだろう。

「巧さんは残業が多いのと、泊まり込みの時もあるんですよね」

「ああ。その時は早めに連絡をする」

「分かりました。父も忙しい人だったので、その辺りは慣れています」

 反射的に憲明さんについて触れそうになり、すんでのところで止める。

「どうかしましたか?」

 俺の顔をじっと見据えながら不思議そうにし、そのまま遠慮なく視線を注ぎ続ける美月ちゃんの行動に珍しく動揺した。
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