「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「いや、どうもしていない」

 美月ちゃんの視線から逃げるように顔を逸らし、自分の不慣れな言動に更に戸惑った。

 普段から気持ちを気取られないようにしているので、相手に表情を読まれることは基本的にない。

 美月ちゃんが察する能力に長けているのか、それとも俺が普通でいられていないのか。

「私はお世話になる立場なので、なにかあったら遠慮なく言ってくださいね」

「分かった。そういうのはないから」

 なんとも抽象的な返事になってしまった。

 呆気に取られた顔で瞬きをした美月ちゃんだったが、すぐににこりと笑うと、胸の前で両手のひらをパンッと合わせて「さて」と場の空気を変えた。
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