「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 美月ちゃんが用意してくれた昼食は単純に美味しかったのと、自分では作らないメニューだったので新鮮さもあり、あっという間に食べきってしまった。

「足りませんでしたか?」

「いや、ちょうどよかった」

 美月ちゃんは納得して頷く。

 まだ三分の一は残っている彼女の皿を見て、次からはペースを合わせて食べようと考える。

 たまに誰かと外食をするにしても基本的に同僚の男たちなので、相手を気にかけたことなどなかった。

「そうだ。明日からしばらく朝は美月ちゃんの会社まで送っていく。帰りは難しいかもしれないけど」

 口の中にうどんを入れたタイミングで話しかけたので、美月ちゃんは懸命にもぐもぐと咀嚼しながら目を大きく開いた。

 手に取るように彼女の言い分が伝わってくる。

「さっき調べてみたら、警視庁の通り道だったんだ」

「お互いの出勤時間は違うはずですよ」

 口の中のものをごくんと飲み込んだ美月ちゃんは、予想通りの発言をした。

「何時?」

「九時からで、十五分前には着くようにしています」

 もう少し早いと思っていたので、あてが外れ、どうしたものかと考える。

「店舗の営業時間と同じになっているんです」

「なるほど」

 静かな沈黙が落ち、美月ちゃんは右手に箸を握ったまま動きを止めてしまった。

 余計なお節介で気を遣わせたか……。後から気づいても遅いのだけれど。
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