「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「巧さんは何時からですか?」

「八時半で、俺はわりとぎりぎりに出社する」

 美月ちゃんは箸を置いて立ち上がり、キッチンカウンターに置いてあった自身のスマートフォンを持つ。

 真剣な顔つきで画面操作している様子を見守っていると、ぱっと顔を上げた美月ちゃんと視線が真っ直ぐぶつかった。何故だか分からないが拍動が強くなる。

「会社の隣にカフェがあるので、そこに八時くらいに下ろしてもらえれば、巧さんは間に合いますか? カフェから警視庁まで十分くらいなんですけど」

 スマートフォンで車の移動時間を調べていたらしい。

「それは問題ないけど、一時間も時間を潰すのは大変じゃないか?」

「試験の勉強をしようかなって」

 美月ちゃんはテーブルへ歩み寄って、足をかばいながらゆっくりと椅子に腰を下ろす。

「何の試験を受けるんだ?」

「カラーコーディネーターです。十月末にあるので、そろそろ本腰入れて勉強しないと」

「仕事に関係しているのか?」

 俺の質問に首を捻りながら、美月ちゃんは箸に手を伸ばす。
< 65 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop