「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「いつもありがとう。顔色がよくなったって、同僚に言われた」

「そうなんですか? 栄養不足だったのかもしれないですね」

 今晩の献立はすき焼きだ。傷んできた野菜をまとめて消費したかったそうで、定番の具材以外にトマトや大根、キャベツまで入っている。

「一気に栄養が取れそうだな」

「ですね」

 にこやかに微笑んだ美月ちゃんと向き合い、手を合わせて食事を進めた。

 食べ終えた後は交互に風呂を済ませ、就寝前の身支度を整えてからソファに腰を下ろす。

 読書をするか、配信サイトでドラマを見るか、どうしようかと寛ぎながら考える。ソファのすぐ隣では、カーペットの上で美月ちゃんがヨガを始めている。

 普段は週二回のペースで仕事終わりにヨガスタジオに通っているらしい。この一週間は休んでいたから、今日はスマートフォンで動画を見ながらひとりでやると風呂に入る前に意気込んでいた。

 元気な子だな、と動きやすそうなヨガウエアを着た華奢な背中を眺める。

 美月ちゃんは仕事に勉強に趣味に全力投球だ。つい最近まで恋愛もしていたのだから、とても充実した日々だったに違いない。
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