「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「あんたみたいな女は地獄に落ちればいい」

 地を這うような声で呪いの言葉が落ちた直後、頭の上に冷たい液体が降ってきた。

 フルーティーな香りがする透明なそれは、先ほど陽平と乾杯したシャンパン。

 口にした瞬間に広がった美味しさを思い出し、切なさと惨めさが胸を突き上げる。あまりの苦しさに両手を胸に押しあてて息を詰めた。

「双葉! いくらなんでもやりすぎだよ!」

 陽平は私に駆け寄るでもなく内村さんへの苦言で留めている。

 ここでようやく私は現実を受け入れたのか、目から涙の粒がぽろぽろと落ちた。これまでどこか心ここにあらずという心情で客観的に見ていた。

 そっか、私じゃなくて彼女が好きなんだね……。

 毎日好きと伝えてくれたし、誕生日にお祝いをしてくれたし、こんな滅茶苦茶な状況でもどこかで信じていた。

 内村さんと結婚した後に私と出会い、離婚するつもりでいたのかもしれないと。

 そんなわけがないのに。だって彼女は妊娠している。それが答えではないか。

 ぎりぎりまで耐えていた堤防が決壊し、一度こぼれた涙は止まってくれない。

 早くここから立ち去ろう。多くの人に迷惑をかけた。
< 7 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop