「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「美月ちゃんとの暮らしは居心地がよくて、君となら幸せな結婚生活を送れると思えたんだ」

 これは俺の素直な想いだ。激情のような恋情ではなく、凪ぐような親愛を抱いている。偽っている部分があるとしたら、この感情の表面だけを彼女に見せて〝契約結婚〟を提案したところ。

 適当で軽率で、打算的だと思われただろうか。誠実に向き合いたいのに、きちんと伝えられていない気がして心がざらつく。

 重苦しい沈黙が落ちてから一分だったのかもしれないし、五分だったのかもしれない。時間の感覚が麻痺している俺を真っ直ぐに見据えて、美月ちゃんは鼻からすうっと息を吸ってから口を開いた。

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