「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
三、
制御できない心臓は、全力疾走した時のようにドッドッと重い音で速く鼓動している。
巧さんからの唐突なプロポーズと理由を、初めはどこか上滑りするような感覚で聞いていた。
しかし時間をかけてじわじわと胸に染みてくる感情は悪いものではなく、むしろ好意的で、どうしてそんな想いになるのか客観的に自分を見つめてみる。
巧さんは説明を終えた後ソファで沈黙を貫いている。私がなにか言葉を発するまでこのままでいそうな気配があった。
……そもそも契約結婚って、お見合いとなにが違うのだろう。言い方が悪いけれど、結婚自体が契約を交わす行為だよね。
お見合いは、結婚を希望する双方の気持ちが同じ方を向き、共に歩みながら愛情を育んでいくのだと思う。
契約結婚も同じだよね? 始まりが、周りの力によって引き寄せられたのか、本人たちの意思で決めたのか、そこだけが違うだけであって。