「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました


 足がよくなってからも、資格試験が終わるまでは朝にカフェまで送ってもらうことになった。

 これまでの人生経験のなかで、勉強を外でするという発想すらなかったから、驚くほど捗ることへ感動している。

 思わず興奮気味に巧さんへ伝えた時、『俺は普段から外で仕事をしている。捗るから』と、淡々と返された。

 仕事ができる巧さんと同じやり方を学べて嬉しくなったし、彼のライフスタイルについて更に知りたくなった。人として尊敬しているからこそ、時間が経っても巧さんへの興味は湧水のように溢れるのだ。

 それにしても、陽平へ時間を割かなくてよくなったし、いいタイミングで別れられたのは不幸中の幸いだった。

 バイヤーの陽平は同じ部署なので嫌でも顔を合わせなければならない。それでもマイナスな感情は抑え、平静を心掛けてやり過ごしている。

 そもそも用事があって直接話す時、激しく動揺したり、悲しくて辛い感情の波に襲われたりしない。

 ただ楽しかった頃の思い出が蘇り、胸に鈍痛のようなものはたまに感じるけれど。

 別れから十日ほどでこの調子なので、巧さんと婚姻届を提出する頃には綺麗さっぱり忘れ去ることができるはずだ。
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