「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「休業しているはずの内村さんが本部にいるのも目立つし、お腹も膨らんでいたから、何人かが声を掛けたんだって。それで内村さんが、仲よくしている社員数名に、今回のことを漏らしたらしいの」

 それはあまりにも軽率ではないのか。そう思うのは私の傲慢さなのか。だって、陽平にも処分が下る可能性が出てくる。それ以上に私を制裁したいってことなのか……。

『私、飛島さんのこと許しませんからね』という内村さんの怒りに満ちた声が脳内で再生され、目をぎゅっときつく瞑る。

「なぜか知らないけど、こういう類の話って、あっという間に広まるよね……」

「きっともう、みんなの耳に届いているんだね」

 今朝から抱いていた違和感の理由がわかり、全身から血の気が引いていくようだった。

「私は美月と仲がいいから、話が回ってこなかったのかも」

「私のせいで、麻美も嫌な思いしたらごめんね」

 問題となっている人物と親しいという理由だけで、簡単に距離を置こうとする人間もなかにはいるだろう。
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