「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 次に目を覚ましたのは、遮光カーテンの隙間から薄っすらと光が漏れる頃だった。

 どれくらい眠れたのだろうと手を伸ばしてスマートフォンを探しながら、だんだんと慣れてきた目で消された蛍光灯を見やる。消灯したのはもちろん巧さんしかいない。

 いつの間に……。

 スマートフォンがなかなか見つからず、仕方なく上半身を起こす。そこで初めて額に貼られた冷却シートの存在に気づいて、手を押しあててじっと動きを止めた。

 ちょっと待って。これが貼られているってことは、買い物に行ってくれたんだよね。

 部屋を明るくし、目を眇めてスマートフォンの画面を見る。あと数分で六時だ。

 布団のそばにリビングにあったはずの体温計が置いてあり、さらには経口補水液も用意されていた。

 申し訳なさより嬉しい気持ち勝って胸が温かくなった。

 巧さんが優しいのはもう十分知っていたけれど、ここまで尽くしてくれるなんて慈愛が深すぎるよ。誰にでもできそうでいて、案外できないものだと思う。
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