「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「優しすぎて、泣きそう」

 ひとり言をこぼして、込み上げた感情を落ち着かせる。

 ギスギスした雰囲気の職場でずっと気を張っていたので、自分で思っていた以上に我慢を重ねてストレスを溜め込んでいたのかもしれない。

 あれこれ考え、自分で自分の心を乱していいことなどひとつもない。家電製品が稼働する音に耳を傾けて、なにも考えずにぼうっとする。

 ふと目の前の冷凍庫に入れてある食品を確認しようと扉を開けると、ここにも巧さんが購入したであろう冷凍食品がたくさんあった。

「うどんもパスタもある……」

 ネットスーパーの注文品が十時から十二時の間に届くにしても、それまでにこれだけのものがあれば心強いし、明日以降もし体調が回復しなかった時にも助かる。

 お昼はパスタにしよう。あーあ……お弁当を作れなかったのが残念だな。

 巧さんは卵焼きが好きだから、今日はひじきを混ぜて焼こうと楽しみにしていたのだ。

 お弁当箱が空じゃなかった日は一度もない。心なしか頬の辺りがふっくらしてきた気がするし、私の作った料理ならどうにか時間を作って食べてくれる。でも、今日はきっと昼食を抜くはずだ。夕食はさすがに食べるとは思うけれど……。
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