冷徹王子の甘い笑顔【番外編】
体育館に着くともう既に試合が始まっていた。
私たちが試合中に3人が去っていく姿を見ていたから、
試合時間が少し被っていたのかもしれない。
「もう始まってた!」
出遅れた、とばかりの表情をする咲羅の手を引っ張り見れる場所を探すが、
体育館はすごい人だかりで中に入るのはちょっと難しいかもしれない。
「これはちょっと、見れないかなぁ・・・」
ボソッと呟いた私の言葉に咲羅も諦めているのか「声だけで我慢しようか」と言った。
バスケの反対側でバレーも行われているからコートが狭く、
2階席からの応援しか無理だったが、その2階席が満席だった。
私たち以外にも中に入るのを諦めた生徒たちがおり、
開いている扉の近くで中の様子を伺っていた。
「私たちのクラスは強いから大丈夫だよ、決勝まで進むと思う」
「私もそう思う」
扉の近くの階段に座り、声だけを頼りに試合の様子を想像した。
皇坂くんと燈真のおかげもあってか少しだけバスケの知識がついたのもあり、
声を聞くだけでも楽しかった。
「南於!」
すると知っている名前が聞こえた。
咲羅と顔を見合わせる。
「前前!」
「こっち!」
声だけでもドキドキする。
今はどれだけの点差なんだろう。
皇坂くん・・・。