恋は、空想の中。(恋空)
episode.0
彼と初めて会って過ごして、ホストクラブに足を踏み入れた日。
誘われた当日でなく、次の日になってから行くことになったのには、そもそも理由があった。
*********************
その頃私は、完全に脈がない人のことを好きになっていた。
相手からは返事もだんだん返ってこなくなって、何をしても言ってもダメで、もうそんな気持ちにけじめをつけようと思っていたところだった。
だから、バレンタインデー。
彼の好きなデザインのチョコレートを手作りして渡せればと思って。
気持ちが伝わらなくたって、最後の思い出になって、笑ってくれればいいやって。
けれど、何度連絡をしても、その話はうやむやになって、前日になってもやっぱりハッキリした返事はくれなかった。
チョコを作り始めて、なんとか思い通りに完成して、大事に可愛くラッピングをし終わったときも。
結局連絡はなく、私からのメッセージも見てくれないままで。
まあ、半分、分かってたんだけどね。。。
そうだよ、どーせもうダメなんだから、失恋なんてさっさと立ち直って、新しい出会いでも探さなきゃね。
代わりに渡したい人でも誰かできないかな。笑
…
「カッコいい!アイドルみたい♡」
「僕ホストですよ!」
「ホストクラブ面白そう!」
「今日もお店やってるので、会いに来れますよ!」
「そんなお金持ちじゃないから、無理だよー笑」
「初回はそんなに高くないんですよ!」
…
「じゃあ今日は無理だけど、明日用事が終わったら行ってみたいかも!」
…
…ホスト、か。
お金をもらって女の子を楽しませるお仕事。
お金で買える恋人みたいな関係。
…それもそれでありかもしれない。
少なくとも明日、一人きりでこの気持ちも何もかも、終わらせるよりは。
*********************
翌朝、万に一つでも彼が来た時のために、綺麗にラッピングした手作りチョコを持って待ち合わせに向かった。
約束した場所で、しばらくはぶらぶらしていたけど、仕事終わりの時間になっても、数時間待ち続けても結局連絡は来ないままだった。
あ、局留めにして押し付けてしまおうかな、と思ったけど(常温だった)日曜なので郵便局が開いてなかった。笑
諦めて家へ帰る道で、一緒に歩くカップル達を見ながら、手に持った紙袋がやけに大きな荷物みたいに感じた。
…
…
…
「今日もお店やってる?」
「やってるよー!会いに来て!」
「うん!行きたい♪」
…
…
…
案内された同伴のお店で、彼がホストを始めてからもうだいぶ長いことを聞いた。
そっか。じゃあ、私みたいな状況のお客さんにも、今まで何度か出会ってきたのかな。
会話がひと段落したところで、おもむろに包みを取り出した。
「ね、よかったら、チョコ貰ってくれない?」
「え!やったあ、手作り?もらうもらう」
「ほんと?ありがとう笑」
「すご!かわいい!食べていい?」
突然のお願いだし、受け取ってくれるだけでもうれしかったんだけど。
彼はそのまま包みを開けて食べだした。
えっ、食べるんだ!初対面の相手の手作りなのに!?
自分で渡しといてなんですけど。
「全然食べるよ!美味しい!ありがとう♡」
目の前で全部食べて、お礼を言ってくれた。
半分感心して、半分呆れたような気持ち。
私だったら持って帰ると思う。さすがにちょっと何あるか分かんないし。
自分で渡しといてなんですけど。
お仕事にしても、多分きっとみんなしてくれることではないよね。
来てよかったな。と最初に思えたのは、その瞬間だった。
誘われた当日でなく、次の日になってから行くことになったのには、そもそも理由があった。
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その頃私は、完全に脈がない人のことを好きになっていた。
相手からは返事もだんだん返ってこなくなって、何をしても言ってもダメで、もうそんな気持ちにけじめをつけようと思っていたところだった。
だから、バレンタインデー。
彼の好きなデザインのチョコレートを手作りして渡せればと思って。
気持ちが伝わらなくたって、最後の思い出になって、笑ってくれればいいやって。
けれど、何度連絡をしても、その話はうやむやになって、前日になってもやっぱりハッキリした返事はくれなかった。
チョコを作り始めて、なんとか思い通りに完成して、大事に可愛くラッピングをし終わったときも。
結局連絡はなく、私からのメッセージも見てくれないままで。
まあ、半分、分かってたんだけどね。。。
そうだよ、どーせもうダメなんだから、失恋なんてさっさと立ち直って、新しい出会いでも探さなきゃね。
代わりに渡したい人でも誰かできないかな。笑
…
「カッコいい!アイドルみたい♡」
「僕ホストですよ!」
「ホストクラブ面白そう!」
「今日もお店やってるので、会いに来れますよ!」
「そんなお金持ちじゃないから、無理だよー笑」
「初回はそんなに高くないんですよ!」
…
「じゃあ今日は無理だけど、明日用事が終わったら行ってみたいかも!」
…
…ホスト、か。
お金をもらって女の子を楽しませるお仕事。
お金で買える恋人みたいな関係。
…それもそれでありかもしれない。
少なくとも明日、一人きりでこの気持ちも何もかも、終わらせるよりは。
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翌朝、万に一つでも彼が来た時のために、綺麗にラッピングした手作りチョコを持って待ち合わせに向かった。
約束した場所で、しばらくはぶらぶらしていたけど、仕事終わりの時間になっても、数時間待ち続けても結局連絡は来ないままだった。
あ、局留めにして押し付けてしまおうかな、と思ったけど(常温だった)日曜なので郵便局が開いてなかった。笑
諦めて家へ帰る道で、一緒に歩くカップル達を見ながら、手に持った紙袋がやけに大きな荷物みたいに感じた。
…
…
…
「今日もお店やってる?」
「やってるよー!会いに来て!」
「うん!行きたい♪」
…
…
…
案内された同伴のお店で、彼がホストを始めてからもうだいぶ長いことを聞いた。
そっか。じゃあ、私みたいな状況のお客さんにも、今まで何度か出会ってきたのかな。
会話がひと段落したところで、おもむろに包みを取り出した。
「ね、よかったら、チョコ貰ってくれない?」
「え!やったあ、手作り?もらうもらう」
「ほんと?ありがとう笑」
「すご!かわいい!食べていい?」
突然のお願いだし、受け取ってくれるだけでもうれしかったんだけど。
彼はそのまま包みを開けて食べだした。
えっ、食べるんだ!初対面の相手の手作りなのに!?
自分で渡しといてなんですけど。
「全然食べるよ!美味しい!ありがとう♡」
目の前で全部食べて、お礼を言ってくれた。
半分感心して、半分呆れたような気持ち。
私だったら持って帰ると思う。さすがにちょっと何あるか分かんないし。
自分で渡しといてなんですけど。
お仕事にしても、多分きっとみんなしてくれることではないよね。
来てよかったな。と最初に思えたのは、その瞬間だった。