恋は、空想の中。(恋空)
そろそろ卓の時間がなくなってきた。
伝票を開いて彼が聞いてくる。

「最後にもう一本、行っちゃマズいー?」

お手本みたいな営業上手だよね。笑

「うん、いいよー笑」

そのまま飲み直し?をしないか誘われたけど、時間も遅くなりそうだったし断ってしまった。
というか、2回説明を聞きなおしても、イマイチその意味がよく分からなかった。笑

初めてだらけの時間は意外と長く感じた。

「どう?初めてのホストクラブ。悪くないっしょ?」

うん。楽しかった。
いろいろ新鮮だったし。

お店はなんか正直よくわからなかったけど、
彼が初めてなのを気遣って、ずっと優しくしてくれたのがうれしくて、
また会いに来たいな、って気持ちにはなってた。

「じゃあお会計がこれだけね」
「はーい」

普段飲みにいくときには、なかなか使わない金額。
でも、天使みたいな彼と過ごせて、いろいろと体験できて、十分満足かも。

「カードだと手数料が〇%かかりまーす」
ふーん?あまり突っ込まないでお支払いを済ませる。笑


この時の私は、まだホスクラの世界を知らなくて、水商売に触れたことなんてなくて、
ホスクラ価格というものに、全然馴染みがなかった。

「次来るときはいくら持ってくればいい?笑」
「次?好きなだけ持ってきてよ」
「じゃあ、最低だと!」
「最低ー?じゃあ……」

彼がこそっと耳打ちしてくれる。
…顔が熱くなった。

今日使った額よりも多い額。うん。まあ。それはそうだよね。

ついさっき、たった数千円でお願いなんかされて、ちょっといい気になってたのがやばい。。。

普段来るお客様と比べたら、こんなの売上にも入らないような金額だよね。

有名人でもお金持ちでもないのに、こういう場所に来た自分が恥ずかしくなった。
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