死神×少女
部屋に残された、グリアとリョウ。
「いい子だよね、亜矢ちゃんは。……確かに、今のグリアは栄養失調だもんね」
クスクスと笑うリョウ。
グリアにとっては面白くもなんともない。だが、言い返す元気もなく。
「……買ってくるなら、肉入りのオニギリにしやがれ………」
と、亜矢を呼び止めた事に対しての言い訳を呟いた。
狭い部屋に、死神と天使が二人きり。何とも不思議な空間である。
しばらく沈黙が続いた。
グリアは熟睡する訳でもなく、ベッドの上で仰向けになり、薄く眉を開いていた。
だが、ふいにリョウが小さく口を開いた。
「亜矢ちゃんを、『魂の器』にする気なんだね?」
唐突に切り出された、話。
グリアの瞳が大きく開かれる。
少し間があって、それから——いつもの口調でグリアは返す。
「———さあな」
グリアの少しの心の乱れも見逃さないリョウは、その返事で悟った。
そして少し顔を俯かせると、天使には似合わない、その表情に暗い影を落とす。
「止めはしないよ。ただ……、ボクは、最後まで見届けるから」
グリアは目を閉じた。
お互い、顔も合わせないでの会話だが、何か奥深い所で繋がっているようだ。
「当たり前だ、誰だろうと…邪魔はさせねえ」
その、力強さを込めた言葉にグリアの意志が感じられる。
バタン!
ちょうど、その会話の区切りを見計らったようなタイミングで部屋のドアが勢いよく開いた。
息を切らしつつ、コンビニの買い物袋を手にした亜矢が部屋に入ってきた。
「お待たせ、買って来たわよ!」
グリアがベッドから身を起こすと、亜矢はそのグリアの膝の上に買って来た食べ物をドサドサっと乗せる。
グリアは、冷静にその食べ物を物色し、手に取る。
ある一つの食べ物を手にした時、グリアはニヤっと笑った。
「お、肉入りオニギリ。気が利くじゃねえか」
「あんたの好みは覚えたわ。今日は奮発!」
いつもなら嫌味に聞こえるであろうその言葉も、今は何だか素直な意味として言える。
そして、嬉しそうにそのオニギリを食べる死神を見ていると、自然と笑えてくるのだ。
「じゃあ、ボクはもう帰ろうかな」
リョウが立ち上がると、亜矢も慌てて立ち上がる。
「ま、待って、あたしも…!」
どこか照れを隠すようにも見える素振りで、亜矢はリョウの後を追った。
「おい、リョウ」
立ち去ろうとするリョウの背中を、グリアの低い調子の声が呼び止める。
「………なに?」
薄く笑いを浮かべ、リョウが静かに振り返る。
「………………」
だが、グリアはその続きを言わない。
『余計な事はするな』
そのグリアの沈黙が示す意味を、リョウはすぐに読み取った。
そしてグリアは立ち上がると、ゆっくりと亜矢に向かって歩き出す。
「亜矢」
ゆっくりとした足取りで近付くと、亜矢の目の前に立つ。
亜矢はグリアを見上げる。
いつもの、意地悪で余裕のある彼とは、どこか違う。だから、油断もしていた。
グリアは亜矢の頬を片手で包むと、亜矢が反応するよりも先に口付けた。
「………っ!!」
少し長い時間……いや、数秒なのかもしれないが、ようやくそれは離れた。
いつもの亜矢らしくなく、呆然とグリアの顔から視線をそらさない亜矢。
「これは、礼代わりだ………なんてな?」
ククっと笑うグリア、そこでようやく、亜矢は我に返った。
「な、何すんのよっ!!いきなりっ………!!」
顔を赤くし、口元を押さえる。
この反応からして、いつもの亜矢の調子ではないのは明らかだ。
「バーカ、いつもの口移しだろうがよ」
「あっ…」
言われて気付いたのか、亜矢の動きが止まった。
確かに今、彼は『命の力』を注ぎ込んでくれたのだ。この行為はもう、日課。
だが、亜矢は今———確かに、別の事を意識した。
今回ばかりはちょっと自覚があった。
認めたくはないが、グリアに対して、亜矢の中の何かが変わりつつあった。
そう、これも今日の『異変』の1つなのであった。
そして、何かが起こる前触れ———。
「いい子だよね、亜矢ちゃんは。……確かに、今のグリアは栄養失調だもんね」
クスクスと笑うリョウ。
グリアにとっては面白くもなんともない。だが、言い返す元気もなく。
「……買ってくるなら、肉入りのオニギリにしやがれ………」
と、亜矢を呼び止めた事に対しての言い訳を呟いた。
狭い部屋に、死神と天使が二人きり。何とも不思議な空間である。
しばらく沈黙が続いた。
グリアは熟睡する訳でもなく、ベッドの上で仰向けになり、薄く眉を開いていた。
だが、ふいにリョウが小さく口を開いた。
「亜矢ちゃんを、『魂の器』にする気なんだね?」
唐突に切り出された、話。
グリアの瞳が大きく開かれる。
少し間があって、それから——いつもの口調でグリアは返す。
「———さあな」
グリアの少しの心の乱れも見逃さないリョウは、その返事で悟った。
そして少し顔を俯かせると、天使には似合わない、その表情に暗い影を落とす。
「止めはしないよ。ただ……、ボクは、最後まで見届けるから」
グリアは目を閉じた。
お互い、顔も合わせないでの会話だが、何か奥深い所で繋がっているようだ。
「当たり前だ、誰だろうと…邪魔はさせねえ」
その、力強さを込めた言葉にグリアの意志が感じられる。
バタン!
ちょうど、その会話の区切りを見計らったようなタイミングで部屋のドアが勢いよく開いた。
息を切らしつつ、コンビニの買い物袋を手にした亜矢が部屋に入ってきた。
「お待たせ、買って来たわよ!」
グリアがベッドから身を起こすと、亜矢はそのグリアの膝の上に買って来た食べ物をドサドサっと乗せる。
グリアは、冷静にその食べ物を物色し、手に取る。
ある一つの食べ物を手にした時、グリアはニヤっと笑った。
「お、肉入りオニギリ。気が利くじゃねえか」
「あんたの好みは覚えたわ。今日は奮発!」
いつもなら嫌味に聞こえるであろうその言葉も、今は何だか素直な意味として言える。
そして、嬉しそうにそのオニギリを食べる死神を見ていると、自然と笑えてくるのだ。
「じゃあ、ボクはもう帰ろうかな」
リョウが立ち上がると、亜矢も慌てて立ち上がる。
「ま、待って、あたしも…!」
どこか照れを隠すようにも見える素振りで、亜矢はリョウの後を追った。
「おい、リョウ」
立ち去ろうとするリョウの背中を、グリアの低い調子の声が呼び止める。
「………なに?」
薄く笑いを浮かべ、リョウが静かに振り返る。
「………………」
だが、グリアはその続きを言わない。
『余計な事はするな』
そのグリアの沈黙が示す意味を、リョウはすぐに読み取った。
そしてグリアは立ち上がると、ゆっくりと亜矢に向かって歩き出す。
「亜矢」
ゆっくりとした足取りで近付くと、亜矢の目の前に立つ。
亜矢はグリアを見上げる。
いつもの、意地悪で余裕のある彼とは、どこか違う。だから、油断もしていた。
グリアは亜矢の頬を片手で包むと、亜矢が反応するよりも先に口付けた。
「………っ!!」
少し長い時間……いや、数秒なのかもしれないが、ようやくそれは離れた。
いつもの亜矢らしくなく、呆然とグリアの顔から視線をそらさない亜矢。
「これは、礼代わりだ………なんてな?」
ククっと笑うグリア、そこでようやく、亜矢は我に返った。
「な、何すんのよっ!!いきなりっ………!!」
顔を赤くし、口元を押さえる。
この反応からして、いつもの亜矢の調子ではないのは明らかだ。
「バーカ、いつもの口移しだろうがよ」
「あっ…」
言われて気付いたのか、亜矢の動きが止まった。
確かに今、彼は『命の力』を注ぎ込んでくれたのだ。この行為はもう、日課。
だが、亜矢は今———確かに、別の事を意識した。
今回ばかりはちょっと自覚があった。
認めたくはないが、グリアに対して、亜矢の中の何かが変わりつつあった。
そう、これも今日の『異変』の1つなのであった。
そして、何かが起こる前触れ———。