死神×少女
「つまり、コランくんは悪魔なのね……?」

もはや、こういう展開に順応してしまってる自分が悲しい。

「………へへっ、まだ見習いだけどな!」

コランは照れ臭そうに笑った。

「和んでんじゃねえよ、てめえら」

亜矢の正面、コランの背後に、いつの間にか死神グリアが立っていた。

「っ!あんた、いつの間にっ…!!」

亜矢が一変して鋭い視線を向けるが、グリアは妙に落ち着いている。

「メシを馳走になろうと思って来たんだがよ」

つまり、またしても夕飯をたかりに来たのである。すでに日課だが。
コランが後ろを向き、グリアを見上げる。グリアは冷たく見下ろす。

「ったく、悪魔なんか召喚してんじゃねえよ」

死神は、一目見ただけでコランが悪魔である事を見抜いたらしい。

「ちがっ!あたしは別に何も……」
「しかもガキじゃねえか。まーた面倒なの呼びやがって」
「ガキじゃない!!コランだっ!!」

増々話がこじれそうなこの状況の中、さらに来客を知らせるインターホンが鳴った。
亜矢は部屋から逃げ出すようにして玄関へ向かった。
玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは………天使の彼だった。

「亜矢ちゃん、シュークリーム作ったんだけど良かったら食べる?」

亜矢の状況など知らないリョウは、いつもの笑顔。
その手には、シュークリームの入った透明なお弁当箱。
天使とは思えない見事なお隣さんっぷりである。

「リョウくん、助けて……」
「え?どうしたの?」
「とにかく、上がって」

リョウが亜矢の部屋に入り、コランを目にした時の第一声。

「うわぁ、悪魔を召喚しちゃうなんてすごいね」
「いえ、そうじゃなくて………」

感心したように驚くリョウに、亜矢は力の入らないツッコミを入れる。

「この本がいつの間にかあたしのカバンの中に入ってて、本の中からこの子が突然現れたのよ」

亜矢は床に落ちていた黒い本を拾うと、リョウに手渡した。
リョウはその本を手に取ったその一瞬、何かを感じ取ったらしい。

「きっと、亜矢ちゃんの生命力に引き寄せられたんだろうね」
「あたしの?」
「うん。悪魔は、人間の生命力を吸収して生きるから」
「えっ!?」

亜矢は改めてコランに視線を向ける。
コランは、何やらグリアと言い合っている。

「ガキは大人しく魔界に帰んな!」
「ヤダ!オレはすでにアヤと契約したんだ!!」
「……なんだとっ!?」

グリアの顔色が変わる。
と、同時にグリアとコランは亜矢の元へと勢いよく向かう。

「おい、亜矢!テメエこのガキと契約したのか?ああっ!?」
「なあなあアヤ!はやく願いを言えよー!」

死神と小悪魔に迫られる形になって、亜矢は思わず一歩引いた。
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