死神×少女
次の日の朝。

「ちょっと、なに朝から機嫌悪そうな顔してるのよ?」
「……………」

今日も何故かグリアと一緒に登校する事になった亜矢だが、隣で歩いているグリアは昨日以上にイライラが増しているようだ。
昨日は昨日で、怒りを発散する事が出来なかったのだから。

「何だか知らないけどそんなに怒ってばかりで……栄養不足なんじゃないの?」
「……なら、そこら辺の魂喰ってもいいのかよ」
「そ、それは絶対にダメよっ!」

そんな相変わらずの会話を繰り返し、学校まで辿り着くと。
運の悪い事に、今日に限って校門の前で体育の有田先生に出くわし、さらに悪い事にグリアに絡んで来たのだ。

「コラァ、貴様ぁ!何だ、コレは!?」

有田はグリアを見るなり、胸元にあるペンダントを鷲掴みにして引張る。
グリアは制服の時も私服の時も、いつも胸元に赤い宝石のついたペンダントをしている。

「学校にこんなモノを持って来ていいと思っているのか!?」

グリアは特に動じる事なく目を細めていたが、ふっと無言で顔を伏せた。
亜矢はその側で、その様子を緊張しながら見ている。

(今日の死神はマズイわ、何をするか分からない!)

どちらかと言えば、グリアよりも有田の身を案じている亜矢だった。

「聞いてるのか!?だいたい、貴様はそのロン毛自体が規則違反……!」

有田がそう言った瞬間、グリアのペンダントの宝石を掴んでいた有田の手首を、グリアの片手が力強く握りしめた。
ン?と有田がその手に目を向けたその時、グリアが顔を上げた。

「…………触んじゃねえよ。殺すぞ」

低く、重いその一言。
上げた顔から除く鋭い瞳からは、殺意とも取れる恐ろしい輝きを放ち、相手を一瞬で射貫いた。
さすがに有田も恐怖を感じたのか、小さく声を上げたかと思うと逃げるようにして目の前から去っていった。
いや、それが利口だろう。死神の場合、『殺し』は冗談ではない。

「あんた、そのうち退学になるわよ…?」

半分呆れたように亜矢が言うと、グリアは今度は低く笑った。

「面白え。やれるモンならな」

ああそうだ、コイツに心配は無用だった、と亜矢は自分自身に溜め息をついた。
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